連載二回目の今号では、サブタイトル「悲惨、バルコニー防水の手順無視」として、雨漏り修理の様子について、バルコニーに絡んだ部分の修理について解説しています。
初回となる前回では、総論として建物の各部の不具合事象についての紹介でしたから、今回からは、各部をクローズアップした各論です。
各論ですから、修理の内容とともに、雨仕舞の概念を含めて中身を掘り下げています。
論文ではありませんから、ページ数、文字数のこともあり、全てを詳細に書くことを不可能ですが、建築実務者向けにわかりやすく書いたつもりでいます。
実務者の皆さんには、ぜひご覧いただき、雨漏りについての知識を増やしていただきたいと思います。
雨漏り修理に取り組んでいると、様々な現場に出会います。
20年以上雨漏りに関わっていますから、多くの現場に出会ってきていますし、雨漏りレスカーで相談を受けた件数も含めますと、その数は相当な件数になっています。
ただ、数多くの雨漏りを見て、ずっと変わらないことがひとつだけあります。それは、いつもお住まいの方が困っているという事だけ・・・・・。
「そんなの当たり前じゃないか!」
とお叱りを受けるかもしれませんが、それが、雨漏りの事実なのです。
そんな現実に対し、何が出来るのか?と考えると、雨漏りを直す事が出来る仲間を増やすことも必要なことであり、その活動の一つが、この雨漏り110番グループでの活動です。
ただし、雨漏りを修理する知識や技術は、現実に起きている雨漏りに対しての、あくまで対処療法であり、そもそも雨漏りを起こさないような建物が増えることが理想なのです。
そこで、建築専門誌の取材依頼を受けてきたり、事例を提供してきたり、連載企画の監修(日経ホームビルダー誌2011年1月号~12月号の1年間)をしてきたのですが、今回、自分で連載記事を書くという事になりました。
この活動は、雨漏りを修理する事例の紹介なのですが、本質的には新築に関わる建築会社や工務店が購読する割合が高いとの事ですので、雨漏り修理に関しての実例実務だけでなく、新築時に現場での問題点を認識し、予防を出来ることが施工品質の向上に繋がり、雨漏りを起こさない建物になるのだろうと言う想いもあり「知識不足が雨水を呼び込む」というサブタイトルを付けています。
この連載企画に際し、ご自宅の雨漏り修理の掲載をご快諾いただいたお客様、初めて自分で書く、書く事に関して未熟な私のサポートをしてくださる副編集長のO様、ご協力いただいております皆様に、心より感謝申し上げます。
そんな活動、連載開始しました。
その出会いは1通のメールからでした。
「始めまして、私は神奈川県川崎市にて雨漏りに取り組んでいる・・・・・」
メールの主は、現在、雨漏り110番を主催する代表の唐鎌氏からのメールでした。
浜松に出張に行くことになり、雨漏りレスカーの活動も見ていて、是非会いたいとの内容だったのです。
しかし、それこそ雨漏りレスカーでの活動により感じていたこと「あまりにも自己中心の人が多い事」に憂慮していた私でしたから、会いたいと言う話も、疑うようにたいへん高飛車なメールの返信をしたのです。
「御社HPを拝見させていただきましたが・・・」
メールの内容は割愛させていただきますが、雨漏りに取り組んでいると言われても、素直に信じる事が出来ず、失礼なメールを送ったのですが、そこは大人の対応で丁寧な返信があり、お会いすることとなったのです。
後日、当社からほど近いファミレスでお会いして話すことおよそ2時間、雨漏り真剣に取り組んでいるかどうか、そこは実務に関わる人間だから判ることもあり、直接話をすることにより、私の誤解が解けたのでした。
ただ、私が失礼なメールを送ったことは差し置いて・・・(苦笑)
このことが、私が雨漏り110番に参加するきっかけであり、スタートでした。
雨漏りレスカーで経験した多くのご相談、それは対価を頂くことなく、ただただ日本中の何処の誰か判らない相手からの相談を受け続けるという、本当にボランティア活動のようなものでした。
ただ、多くのご相談を受けるという事は、やりたいと言ってもできることの無い貴重な経験ですから、これはボランティアではなく、勉強の機会だったと思っています。
住まいが雨漏りをして困っている、それが直らないと言う、場合によってはノイローゼのような状態に陥っているケースもあるなかでのご相談ですから、それを勉強と言っては相談者の方々に大変失礼ないのは重々承知しているのですが、相談を通じて雨漏り解決への道筋が少しでも見えると、大変喜んでいただけることもあり、そこはお許しいただいていたのです。
そしてこの経験を活かし、お客様からのご相談はもちろんですが、雨漏り110番グループ技術統括本部長という役割にて、グループ内メンバーへの調査や修理の助言や技術指導を行い、グループ全体のさらなるレベルアップを目指しています。
しかし、そもそも雨漏りに取り組む技術力のあるメンバーが揃っているにも関わらず、なぜ助言や技術指導が必要なのか?
それは、多くの経験を積めば積むほど、知識が蓄積されればされるほど、雨漏りというものは難解になっていくと言う、不思議な現象があるからなのです。
これは、たいした経験が無かった頃には気がつかなかったような瑕疵に気がつくようになるという、経験を積んだものにしか判らないことなのですが、反面、知識が無い人ほど、簡単に判ったような錯覚に陥るという、実は大きなリスクを抱えてしまうのも、雨漏りに関わるものの宿命なのかもしれません。
このような経験の積み重ねをし、日々レベルアップのための研鑽を積む姿勢、プロを名乗る以上、それは当たり前の話なのですが、プロという看板に溺れてしまうと、自分の未熟さに気がつかなくなってしまうのも、雨漏りの調査や修理が、他の人に簡単に出来ないことだからこそかも。
全ては雨漏りで困っている方々の役に立ち喜んでいただくために、メンバー全員、愚直に努力を重ねるだけの、当たり前の繰り返しなのですが・・・。
完
住まいの雨漏り 5 浜松店
]]>そもそも昼間は現場に出ているので、帰宅後、パソコンの前に座って、ようやく内容を確認するのですが、多い時は書き込みが毎晩続き、一晩に何件も重なっているのに、匿名の相談者と、何の対価も発生しないという、自分の知識を掲示板に公開し続けているという状態だったのです。
もちろん、それが悪いと言うことでは無いのですが、この掲示板で困ったのは、相談者が自由に書き込みできるのと同時に、回答者も自由に書き込みが出来ると言うことでした。
何が困ったのかと言うと、誰でも自由に書き込めるという事は、相談に対して答える人も、自分の主観で無責任に回答を書く事も出来ると言うことなのです・・・。
実際、相談者の方々は困って書き込んでいるのですが、自分の知識をひけらかすように、得意な特定分野について長々とウンチクを書き込んで満足するような、たいへん残念な方も居たのです。
もちろん善意でやっていると考えれば、それはそれで悪いこととは言えないのですが、残念ながら、相談内容を汲み取ることよりも、自分の仕事の事につなげるような発想しか浮かばないような方も居て、これには随分と困りました。
このような経験から、雨漏りを正確に理解するためには、本当に建物を総合的に理解する必要があることを痛切に感じていたのもこの頃から、何かもっと自分に出来ることはないものか?雨漏りで困っている方々の手助けをするより良い方法は無いものか?と、相談の傍ら、色々なことを考えていたのです。
しかし、相談サイトが海外からの攻撃にあうという酷い状態が増え、サイトが閉鎖されて数年後、とある出会いがありました。
つづく
住まいの雨漏り 4 浜松店
]]>仕事を受注しなければ、これからの生活にも困ってしまうという事もありますから、コネとは言えないようなコネを利用しつつ、紹介された建設会社へ行ってみたりしたのですが、どこへ行っても「安くやるならやらしてやるよ」とあしらわれました。
まあ確かに、仕事の出来不出来に関して口で言っても伝わる訳は無いし、そもそも、その信用すら無いのですから仕方がありません。
そこで、塗装工事と言う仕事に対して自分の想い、そして雨漏り修理についての想いとこれまでの振り返り、そんなことをあれこれ考えながら、自分の言葉、想いをつづったホームページ作りに没頭したのも、この当時あまりに時間があったから(笑)
そして「雨漏りレスカー」というページに出会ったのも丁度この頃。
「雨漏りレスカー」と言うタイトルのこのページ、一般の方々からの雨漏り相談を掲示板で受け付け、答えるという、非常に興味深い内容であり、なおかつ何の対価も発生しない完全なるボランティア。
当時、匿名の管理人さんが実質的に一人で相談に乗っている状態で、その姿勢はもちろん、的確なアドバイスに、大きな感銘を受けたのです。
そして偶然のご縁が重なり、私も雨漏りレスカーの相談掲示板に回答者の一人として参加することになったのです。
しかしこの掲示板、そもそも、雨漏りでお困りの方々ではありますが、そもそも建築の知識はほぼ皆無である一般の方々からの書き込みが中心。
書き込みのスタートから、建物の素材の名称も、定義も噛み合わない状態であり、文章でのやり取りを重ねながら、少しづつ推測を重ね、言葉をかみ砕くようにしながら、
などの情報を集め、そこから雨漏りの原因を推測し、アドバイスをしていたのです。
建物も見ずに、文章でやり取りをするだけなのですから、考えてみれば相当無理な内容と言えます・・・。
ですが私自身、自分がそれまで関わってきた雨漏り修理において、多くのお客様と接してきた経験、そして修理によって得たお客様の喜ぶ顔を思い出すと、今現在雨漏りに困っている方が居る以上、それを無視することは出来ませんでしたので、昼間は現場作業をし、夜はパソコンの前で掲示板を見つめ、あれこれ思案するという、相当無茶なことを数年間に渡り行っていたのです。
のちに、この「雨漏りレスカー」のページは、サーバーのウイルス攻撃にあったりしたことや、管理人さんが管理出来なくなったことで、閉鎖するに至りましたが、この掲示板での多くのご相談を受けたことにより、雨漏り修理のスキルと言うよりも、相手の言葉から雨漏りを推測するという、やりたいと言っても出来ない貴重な経験をさせて頂くことができました。
そしてこの経験が、のちの私の活動に大きな影響を及ぼしたのです。
つづく
住まいの雨漏り 3 浜松店
]]>事実、私が関わった雨漏り修理・・・いや修理ではなく補修という方が正確ですが、建物の室内柱のスパンが遠いことで、大梁がたわんで、そのことが要因となって外壁へと負荷が伝わってしまい、これにより外壁に割れが発生、それが原因となっての雨漏りがあったのです。
大梁のたわみが外壁を割るまでの負荷が掛かるのですから、明らかな瑕疵であると思うのですが、依頼者である建築会社から補修内容の指示を受けてしまえば、依頼内容と違う、本来行うべき根本的な修理をすることは出来ないし、さらに言えばこの大事な真実をお客様に伝えることも出来ないという大きな葛藤があるのです。
これは私の中で、本当に大きな悩みであり、ある意味、欠陥を隠す片棒を担がされたようなものでした。それでも、仕事として割り切らなければならないという辛さと言えば・・・。
そんな事を何件も行いながら、モヤモヤを抱えながら過ごしていたある日、下請け業者全部を集めた建築会社の会合の席において、「あいつのところに安全協力費を持っていかれる!」と、名指して意味不明な事を言われたのです。
まずこの安全協力費を解説すると、建築会社が業者への工事代金の支払いをする際に、支払額の数%を差し引き、協力会の口座(だと思う)にプールし、会の運営などに使用するものという位置づけ(のはず)。
でも、雨漏り補修工事の費用とは、そもそも建築工事を請け負った会社が支払うものであると思うのだが、どうやら安全協力費を利用していたらしい。
利益は自分の会社で得ておいて、都合の悪い出費は下請けに押し付ける、そんな構造であったのだろうが、この言葉、「あいつのところに安全協力費を持っていかれる!」の一言で、
私の中でハッキリと決断がなされました「こんなバカバカしい事はもう辞める!!」
翌日の午前中に、協力会を退会すること、協力会入会時に預けた預かり金の返却要求など文章にまとめ、建築会社へFAXで送りつけたのです。
この建築会社の協力会を辞めるという事は、その会社からの仕事が無くなることを意味するのだが、そんなことよりも私は自分自身のプライドを優先したのです。
しかし当時、この会社からの仕事は当社の年間売上の6割を超えており、イコール仕事が無くなることを意味しており、まさに若さゆえの勢いだったのかも知れませんが(苦笑)
しかし、この時に後悔は全くなく、本当に清々しい気持ちでありました(笑)
まあ、このあと仕事がなくて苦労したのは言うまでもありません。
チラシを作成し、それをポストに入れて歩いてみたり、訪問販売のように、見ず知らずのお宅に営業をしてみたりと・・・・なんて出来るような勇気もなく、知り合いに頼んだりしながらちょっとした仕事をいただきながら食いつなぎつつ、この間、時間があることを利用して、当時購入したばかりのパソコンを見よう見まねで使いながらやったことは、建物を直すという仕事の意義と責任についてなど、私の中の思いの丈を書きつづったホームページの製作でした。
これが今の私の仕事との関わりというか、譲ることのない仕事への想いの原点となったことを、今ではとても懐かしく思い出します。
住まいの雨漏り 2 浜松店
]]>私が雨漏りに関わるようになったのは、建築業界に転職して間もない頃、20年以上前の話なのだが、当時、新築を中心とした工事を手掛ける建築会社との取引が中心であったのだが、この会社の住宅、なぜか雨漏りをする住宅が多い。
雨漏りが多いにも関わらず、根本的な原因を理解することなく、次から次へと住宅を建てていくのは、まさにバブル末期の勢いだけだったのだろうと、今にして思えば想像されるのだが、当時はなぜかそれが許されていたのだろう・・・。
いや、実際のところ、お客様の怒りは頂点に達していたし、私も現場へ行くと、たいへん不機嫌なお客様から「お前らが来て、何が治るんだ!」と罵声を浴びせられたものである。
当時、塗装店を営んでいた実家へ戻った私は、もともと家業をやるつもりでいたわけでは無いので、建築の知識はおろか、塗装の知識も危ないぐらい、はっきり言って素人であった。
その素人が見て、建築会社の社長、建築士、現場監督、関連業者がワイワイ言いながら雨漏りが治らない、原因が判らないと言っているのを横目に見ながら、たいへん不思議な感覚があったのです。
なぜ彼らは、建物の一番低いところでコーキング(正式名称はシーリング)をするんだろう・・・・・。
当時、不思議な感覚を覚えて何か言ったとしても、どうせ素人のたわごととしか思われなかったのがスタートだったのだが、そもそも、水は重力に逆らうことなる流下するのだから、出口となる部分を塞ぐのは愚の骨頂。
いまでこそ当たり前に言えるのだが、その当時はなにせ建築の用語も知らないものばかりなので、理論的な説明はできなかった。
しかし、この時の当たり前の疑問が雨漏りの浸入口を見つける大きなきっかけとなったこが、私の雨漏りについての興味を大きくしていったのです。
その後、一旦興味を持ち始めると、次から次へと出てくる雨漏りについて、どんどんと解明が楽しくなるのだが(お客様には申し訳ないと思うのですが)、雨漏りを治す際に、新築時の瑕疵について意見を言うと、他業種からは疎まれてしまう事も多い。
さらに言えば、建築会社からすれば、雨漏りが治るのは大変都合の良い話なのだが、その分の支払いをしなければならないので、金を払うのは気に入らないという、大きな矛盾があったのだろうか、なぜか大勢の前で嫌みを言われたりし、このことがきっかけとなり、この会社との取引を辞めたのでした。
しかし、この事は、私にとって大きな矛盾から解放されたことであり、建築会社の雨漏りを治さなくて済むという事は、瑕疵を隠すような事をせずに、はっきりと真実を伝えること「悪い部分は悪い」と言えることを意味したのです。
住まいの雨漏り 1 浜松店
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