いま巷ではマンションのデータ偽装が話題となっています。見識者の中には、販売会社のネームバリューのみを信用し購入する側にも問題がないとは言い切れないため、購入者が施工品質をチェックする体制づくりが急務であると唱える方もいらっしゃいます。これからお伝えするのは、雨漏り関連においても、お客様が支払った対価をきちんと得るために、その本質的な目的を整理していただくための提言です。
私たち雨漏り110番にお問い合わせをいただく案件の中には、塗り替え工事を行ってからそれほど期間が経っていないものが多くあります。塗り替え工事を行う前から雨漏りしていたケースのほかに、工事を行った後から雨漏りし始めたケースもあるのですが、そういったお問い合わせを受ける際に、個人的に疑問に感じることがあります。
そもそも、そのお客様はどうして塗り替え工事をされたのか、という動機についてです。
おそらく、お客様ご自身の資産の中で最も価値があるか、そうでなくともかなり上位に入るであろう「建物」を守り、資産価値を下げないために依頼されたものと思われます。そうであるならば、その結果雨漏りが解決していないこと、ないしは雨漏りが発生したこと、そして、その責任を塗り替え工事を行った業者に求めないことに、どうしても矛盾を感じてしまうのです。
例えば、木造住宅において、構造体である柱・梁などの腐食は、腐朽菌が発生することによって起こります。腐朽菌が生息するには水分が必要ですから、木材に常に水分が供給されていることが、腐食が起こる前提となります。逆にいえば、水が介在していなければ腐食は起こりません。すなわち、建物に水分が介入するメカニズムを断つことが、建物をもたせることの本質であり、それには、雨漏りを止めることが最低条件になってくるはずです。ならば、塗り替え工事後に雨漏りしているという状況においては、お客様が塗り替え工事に対し支払った対価を、実際には得ていないのではないかと思えるのです。
そこで、改修工事を行う業者が、そのことを理解しているか否かを見極める簡単なポイントがあります。
塗り替え工事の見積前調査に訪れた際、雨水が浸入することによるリスクをわかっている者なら、いま雨漏りしているか、過去に雨漏りが起きていたかを確認するはずです。なぜなら、外壁などを安易に塗装してしまうと、その上部から雨水が浸入していた場合、かえって水の逃げ場がなくなり、自ら塗った塗膜が膨れてしまったり、腐食を促進させてしまったりすることにつながりかねないからです。
つまりは、外装を改修する業務に携わる者にとって、雨漏りに関する知見は必須の項目であり、そのことを知らずして本質的な改修工事などできるはずがありません。要は、改修工事と雨漏り修理とは密接に関係し、切り離すことなどできないのです。
建物を「直す」工事においては、成果物が目に見えないものである場合が多いため、大半の工事では、注文者と請負者の間で、その工事の真の目的を共有化することなく進められます。そこで、注文者であるお客様が本質的な対価を得るためには、その工事を行う本当の目的を、自ら明らかにすることが必要であり、そして、すべてを請負者にゆだねるのではなく、その施工が目的を遂げるために有効であるかどうかを、十分に検討されることが重要なのではないでしょうか。