ちょっと専門的な話になってしまいますが、ご説明させて頂きます。
木造住宅の屋上やベランダの多くはFRP防水が施工されています。屋上やベランダに降った雨水が排水される穴に使われている部品のことをドレンと呼びます。
実はこのドレンまわりの雨漏りがとても多いのです。
なぜドレン廻りの雨漏りが多いのか?それは防水層と雨樋との接合する取り合い部だからなのです。
FRP防水は、現場で施工されるつなぎ目のない防水なのですが、排水ドレンとの取り合い部は、成形品との接合部分になってしまうため、剥がれなどによる雨漏りがおきてしまいます。排水ドレン部分から雨漏りをおこさないための工夫の一つが「パンツをはかせる」なのです。
つぎの写真を見て頂ければ、ご理解頂けるかと思います。
真ん中にある白いガラスマットがパンツです。右側のパイプについているのがドレンです。
排水位置の穴にちぎったガラスマット(パンツ)を引きます。
見えずらいですが排水パイプが入るように切り込みが入っています。
積層用の樹脂を含浸させ、排水ドレンを入れます。
その上からガラスマットを敷き込み排水ドレンを挟み込みます。
「パンツをはかせる」とは、排水ドレンのツバ部分をFRPで挟み込んで排水ドレンからFRPを剥がれにくくする工夫なのです。
排水ドレンをFRPで挟み込むために、排水ドレンの下に敷くちぎったガラスマットのことをパンツと呼んでいます。
つまり排水ドレン廻りから、おもらし(雨漏り)させないためにパンツを穿かせるわけですね。
でもよく考えてみるとパンツでおもらしは止められないのでオムツのほうが正しい呼び名かもしれませんね。
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前回は排水ドレンが軒天井のなかで、つながっていなかったというまさかの事態から次の訪問までの仮配管で終わりました。
見た目では、軒天井にシミが出ているだけだったのですが、新築から2年間、雨が降るたびに玄関庇(ひさし)に降った雨水は排水ドレンを通り軒天井へ、軒天井からあふれ出る雨水はサイディングの壁の中(通気層)を通って基礎の上の水切り金物の上から排出されていました。
シミの出た軒天井や軒天井の下地木材、排水ドレンをつなぐといった工事をやり直すのは当たり前なのですが、この状況で考えられる一番恐ろしい事は、サイディングの中の柱や土台といった構造体が傷んでいないかなのです。
今回の場合、通気工法のサイディング壁なのでサイディングの下には透湿防水紙が施工されています。
通常の工事(外壁先行工法)が施工されていれば雨水は透湿防水紙の上を通り土台水切りの上から排出され、柱や土台が傷んでいない事も考えられます。
しかし新築から2年、玄関庇に降った雨水全部が壁の中を通っていた事、もし透湿防水紙になんらかの不具合があったとすると、柱や土台といった中の木材は雨が降るたびに濡れていた事になり考えるだけでも恐ろしいです。
とはいえ恐ろしい事を想像していても壁の中は見えませんのでサイディング壁を解体するしかありません。
とはいってもサイディング壁の解体はいろいろと問題があります。
まずは既存のサイディングがあるかです。古くなるとほぼ同じものは無いと考えたほうがよいかもしれません。
もし同じものがあっても、経年劣化などにより貼り換えたところだけピカピカになってしまう可能性があります。
無塗装品を塗装で仕上げる場合も同じように貼り直す範囲、塗り直す範囲など・・。
サイディング壁を解体撤去する前に、調べる事やどのようにどこの範囲まで直すかなど、お客様と決めなくてはいけない事がたくさんあります。
今回の工事では、2種類、2色のサイディングですが、1種類は見つかったのですがもう1種類が廃版になってしまっていました。
全国の問屋さんの在庫がないか調べてもらってみましたが、色違いの品物は見つかりましたが同じ物は有りませんでした。
お客様に状況を説明し貼り換える範囲と材料の選択など内容をご納得頂いてからの解体撤去になりました。
お客様に許可を頂き解体して中の木材などの確認です。
雨水が通っていたであろう軒天井とサイディング壁の撤去です。
2年間玄関庇の雨水を全て受け止めていた軒天井は上の写真のようにかなり変色していました。
大工さんに解体をお願いしている間に、私は、玄関庇の水張り調査です。
まさか無いとは思いますが玄関庇のつながっていなかった配管以外の部位に不具合が無いかの水張り調査です。
玄関庇の笠木、笠木と壁の取り合い部分など防水層以外の散水調査を行うためには玄関庇のFRP防水層が雨漏りしていない事を確認してからでないと雨漏りの迷宮に迷い込んでしまうかもしれないので・・・(笑)。
仮に繋いでいた排水管をしっかり止めて水張り調査中です。
えっ!まさか・・・(涙)。
水張り調査を開始して3分後まさかの、雨漏り確認です。
FRP防水のドレン廻りがきれいに収まっていなかったのと、排水管とのつなぎ部分の防水テープなど気になる所はあったのですが、まさかFRP防水層までが雨漏りしていたとは・・・。
もし水張り調査をしないで、工事を進めてしまっていたらと考えると恐ろしいです。
今回のドレン廻りの雨漏りの水量ぐらいの場合、通常の散水調査の水量では雨漏りの再現が出来なかったかもしれません。
雨漏り補修工事が完了した後の台風やゲリラ豪雨などの時に再発していたかもしれません。
考えてしまうと恐ろしい事ですが、
やはり雨漏り調査は、簡単な事ではありません。とても難しい調査です。
軽い考えで雨漏り調査に取り組んでしまうと、とんでもないしっぺ返しをもらいかねません。
やはり石橋をたたいて、たたいて壊すぐらい慎重に進めなくてはいけませんね。
しかし実際に散水調査でなかなか分らない時は、壁や天井などを壊したい衝動にかられてしまうのですが・・・(笑)。
この現場のその後ですが、排水ドレンの交換とFRP防水層の増し貼り施工の後、再水張り調査を行い防水層に雨漏りが無いことを確認。
アルミ笠木のジョイント部分やアルミ笠木と壁との取り合い部分など怪しい所をしっかり散水調査を行い雨漏りが無いことを確認。
雨漏りにより変色してしまった下地木材の交換、サイディング壁や軒天井を復旧、シーリング、塗装など仕上げ工事を行い
雨樋を新設し雨水管に接続して全ての工事が完了いたしました。
今回は雨漏り調査、雨漏り補修工事の内容や仕上がり具合などお客様はとても喜んで下さいました。
しかし雨漏りはとても難しく難解な場合もあります。私が想像していた範囲以外に雨漏り侵入位置があることもあります。
もちろん最善を尽くしているつもりですが、再発の可能性も0パーセントでは無い事もお話しもさせて頂き、台風など大雨、暴風雨の後はよく観察して下さいとお願いして今回の工事を終了とさせて頂きました。
これからも頑張ります!(^^)!
]]>今回は珍しい雨漏り事例を二回に分けて、ご紹介したいと思います。
「玄関外の天井に雨染みが有り雨漏りしているので、一度見てほしい」とのご依頼を頂き現地調査に伺いました。
2年前に新築住宅を購入され、玄関庇(ひさし)の軒天井に雨染みがあることに気がついたとの事でした。
この家を建てた建築会社は倒産してしまい、住宅性能保証の調査会社もすでに赤外線調査を終えているそうです。
こんな具合に玄関庇の軒天井にはっきりと雨染みがでていました。
室内側も確認させて頂きましたが、雨染みやクロスの剥がれ、カビなどは確認できませんでした。
一番怪しいのは、玄関庇の防水と玄関庇の笠木部分の取合いかな?などと考えながら梯子をかけて玄関庇の防水層の確認を致しました。
ちょっとお掃除!
怪しいですが、目視だけでは解らない感じです。
玄関庇の笠木もアルミの既製品でシーリングも切れたり剥がれたりしていませんでした。
いろいろと入水経路を考えながらもう一度、雨水浸出位置へ
んっ?
ここで違和感を感じた方は、なかなか鋭い感覚ですね(笑)。
私も、まさかそんな事があるはずないと、自分で考えてしまった仮説を否定する材料を探していました。
、、、ないんです。否定できる材料が。
しかしこの仮説が正しいとすると、緊急事態です。このまま現状維持では帰れません。
施主様に許可を頂き、玄関庇にバケツ一杯の水を撒いてみました。
OH!NO~!
サイディングの一番下の水切りの上からジャ~ジャ~水が出てきてしまいました。
雨染みのある軒天下にある窓の両側はもちろん玄関ドアの両側からも水が出てきてしまいました。
そうです。おそらく間違いありません。
玄関庇の排水ドレンがつながって無いんです。
上の写真を見直してください玄関庇は下抜きドレンでした。玄関先なのでパイプを壁の中に隠す可能性もあるのでは?
、、、無いんです。その下抜きドレンパイプを通す事が出来るスペースも無いんです。
在来工法の木造住宅ですので、柱の寸法を考えるとパイプスペースがありません。
もし壁の中にパイプを隠して通したとしても、それらしき出てくるはずのパイプもありません。
家の設計図面を見せてもらいました。玄関庇の下抜き排水ドレンとドレンからつながる雨樋を図面上で確認できましたが、そこに雨樋は有りませんでした。
お客様に自分で立てた仮設内容をご説明して、工事までの期間のリスクと緊急性を考えシミの出ている軒天井に穴を開けさせて頂きました。
・・・やっぱりでした(涙)。
応急処置です。
お客様からご連絡を頂き雨漏り箇所の現場確認に伺った一日目の内容です。
排水ドレンがつながっていないと言う、ありえない展開からの応急処置でしたが・・・。
この後にまだつづきがありました。
つづきは次回のコラムでお話しさせて頂きます。
下の写真も、「ベランダの床がふわふわ浮いてしまっているので、見に来てほしい。」とのご連絡をもらい、現場調査に伺った時の写真です。
一見、なんの問題ないきれいなベランダに見えますが、
一目見て「またか」と言うのが正直な感想です。
お客様に、詳しく伺ったところ数年前の外壁の塗り替え工事の時に
床面のひび割れが気になり塗装業者に相談したところ、防水工事を勧められて
防水工事を一緒にお願いしたそうです。
このお宅のベランダは、FRP防水モルタル仕上げなので、立上り(壁面)も床面も
保護モルタルで覆い隠され防水層はモルタルの下にあります。
そのため新しく施工する防水層を既存の防水層に繋げる施工が出来ないのです。
このお宅の工事は床面だけFRP防水を施工して壁面と床面の取り合いはシーリング施工していました。
しかしシーリング材は経年劣化しますシーリングが切れてしまえば
雨水がFRP防水層の下の保護モルタル層に入ってしまいます。
壁面のモルタルにヒビ割れが起きれば、そのヒビからも新しい防水層の下に入ってしまう可能性も有ります。
既存防水層と新しい防水層の間に入ってしまった水分が夏の日差しなどにより
気化すると、新しく施工した防水層を剥離させてしまうのです。
お客様の気にされていた床面のヒビは保護モルタル層のひび割れで、防水層のひび割れではないので、雨漏りの原因へと結びつく訳ではありませんでした。
このような立上り面(壁面)、床面がモルタルで覆われているバルコニーの場合は、防水施工が難しく保護モルタル層で守られている為、下の部屋の雨漏りや軒天井のシミなどが無ければ、防水工事は必要ないと思います。
美観的に綺麗にする事を望まれる場合は、置き型のタイルなどもおすすめです。
また、立上り(壁面)の防水層が露出の場合は、防水をする事も可能なのですが
その場合でも、モルタルの中の水分を逃がすことができる通気緩衝工法(通気緩衝シートとFRP防水の複合工法)をお勧め致します。
ちょっと分かりずらいですが、下の写真は床面は保護モルタル、壁面(下から8センチくらい)FRP防水の写真です。
このタイプのベランダなら、立上り(壁面)の既存防水が露出仕上げのため防水工事も可能です。
こちらの写真は、FRP防水モルタル保護仕上げのベランダです。
ひび割れもありますが、雨漏りはしていません。
このようなベランダは、下の部屋での雨漏りやベランダ下の軒天井の雨染みなどがなければ、防水工事はお勧めしません。
この写真は置き型タイルの施工例です。
]]>今回はベランダの壁のサイディングやシーリング、笠木なども傷んでおらず、FRP防水層の剥離、ピンホール確認など雨漏り箇所と原因がはっきりしている為、散水調査は行わずに雨漏り補修工事を行うことに致しました。
剥離したFRPと下地の防火板を撤去。
ドレインも新しい物に交換しました。
床面も少し弱く感じましたので、木質系セメント板を増し張り補強致しました。
もちろん床面の凹凸などを平らに削り、根太ボンドも入れしっかりビス止め致しました。
FRP防水を施工。とても綺麗に仕上がりました。
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