ここではビルの屋根・屋上防水工事についてご説明します。
普通の木造住宅の場合は、ほとんど瓦葺きの屋根になっているので一般の皆様にも馴染みがあると思います。もちろん瓦にも色んな種類があり(日本瓦、スペイン瓦、スレート瓦、セメント瓦、その他)、瓦以外にも金属葺きの屋根などもありますが、基本的な構造が大きく変わることはありません。屋根の下地である野地板に防水のルーフィングを貼り、その上に瓦を葺いてある構造です。とてもわかりやすい構造ですし、一般の皆様にもご存知の方が多いと思います。
しかし、ビルの屋根や屋上防水工事は違います。その工法や種類はとても多く、一般の皆様にはほとんど知られていません。ですから、ここではビルの屋根・屋上防水工事について基本的なことをご説明したいと思います。
ビルの屋根・屋上防水にはどんな工法があるでしょうか?
まず大別すると次の4つに分けることが出来ます。1,アスファルト押え防水工法、2,アスファルト露出防水工法、3,シート防水工法、4,塗膜防水工法の4つです。それぞれの工法の中にも色んな仕様や種類、材料の違いがあります。
アスファルト押え防水工法は最も一般的な工法です。ビルの屋上に行って屋上の床がコンクリート仕上げなら、まずアスファルト押え防水工法だと考えて間違いないでしょう。(注意:シート防水とか塗膜防水の場合もあるが、きわめて少ない)この工法は理論的に優れているだけじゃなく実際の現場でも圧倒的に多く採用されており、その標準耐用年数は15年から20年とされていますが、長いものでは60年以上経過した防水層でも現役として役立っている実績もあり、各種防水工法の中で最も信頼性が高いと言えます。その基本的構造は、屋上全体をアスファルト防水層によって防水したのち、その防水層を押えコンクリートによって押えることで外的損傷から保護すると同時に、劣化の進行を防ぐと言う構造になっています。稀ですがコンクリートのかわりに砂利を敷く、砂利押え工法などもあります。
アスファルト露出防水工法は、ごく簡単に説明しますと1の押え防水工法のようにコンクリートなどの押え層を設けず、おもに砂付きルーフィングと呼ばれるシート状の防水層を露出させた工法です。屋上に人の出入りが無い(または少ない)ケース、いわゆる非歩行や軽歩行の屋上の場合に採用されるケースが多い工法です。構造的には、押え工法の押え層のかわりに1層目のアスファルト防水層を砂付きルーフィングで保護し、劣化の進行を防ぐと言うのが基本的な考え方ですので、表面のルーフィングはあくまでも保護層であり、本来の防水の役目はその下にある防水層が担うと言う考え方が正しいのですが、最近では専門業者の中でも曖昧にしていたり、混同している人が多いようです。
シート防水工法は、読んで字のごとく貼り合せたシートを防水層として用いている工法です。シートにはおもに塩化ビニル樹脂系シート、加硫ゴム系シート、非加硫ゴム系シートなどがあり、それぞれに特性があります。ほとんどの場合が露出工法なので屋上を見ればすぐにわかりますが、まれにコンクリートで押えるケースがあります。この場合は新築時の設計図面や仕様書を見ないとわからないので注意が必要です。(つまり1のアスファルト押え防水工法との違いが見た目ではわからない)
塗膜防水工法は、高分子化合物を主体とした液状材料を所定の厚さに塗布し、造膜(反応硬化して膜を造ること)させて防水層を形成する工法です。平面形状の複雑な屋根や屋上でも容易に防水層を形成出来ますが、高い下地精度が必要であり、施工環境にも様々な配慮が必要です。塗膜防水工法には色んな種類の材料が採用されておりますが、主なものにウレタン樹脂系、ゴムアス系、アクリルゴム系、軟質ポリエステル系、ポリマーセメント系などがあります。またFRP樹脂を防水層とするFRP系の防水工法も塗膜防水の一種と言えます。FRP防水などの一部を除いては新築物件に採用されることはほとんど無く、基本的に塗膜防水工法は改修工事に採用されることが多い工法と言えます。
以上がビルの屋根・屋上防水に採用されている4つのおもな工法です。これらの工法にはそれぞれ特性がありメリット・デメリットがあります。また、同じ工法でも使用する材料や工程によって何種類もの仕様があります。ビル所有者にとっては、このような知識を持つことも必要言えるでしょう。
一般のお客様である皆様が、それらの知識を全て知ることは難しいですが、少なくとも自分の大切な建物についてだけはしっかりと把握しておく必要があると言えます。
当社ではメールでのお問合せやご相談に限って無料で対応させて頂く方針です。ご自分の建物の屋根や屋上のことについて、もっと詳しく知りたい方は、新築時の仕様や屋上の写真などを添付のうえ、お気軽に当社の無料メール相談までお問合せください。