現場状況です。
ガラスブロック下の2階リビング窓上部より漏水するとのことですが、同じような条件下でも雨漏りをする時としない時があり、滅多には雨漏りしないとのことでした。
仮設足場を設置後、漏水個所周辺を確認したところ、漏水箇所上部のガラスブロック廻りには多くのひび割れと、ガラスブロックには補修をした痕跡が確認出来ました。
最も怪しいのは16か所あるガラスブロック周辺で、ガラスブロックがしっかりと納まっていることを祈りつつ、まずはガラスブロック周辺のひび割れをメインに散水を行いました。
ヒアリングをさせていただいた限りでは、滅多なことでは漏水しない様子のようだったので、散水試験でもなかなか再現できない可能性があると思っていたのですが・・・。
散水してから約15分であっさり再現となりました。
その後、構造を想像し入水経路を考えながら、その他のガラスブロック廻りのひび割れに散水を行うのですが、滅多には漏水しないないなんて嘘のように、どこに散水しても漏水してしまうのです。
しかも、今まで漏水していた2階リビングの窓だけではなく、1階の窓枠上部からも漏水するというおまけ付きでした。
この時点で、ガラスブロックの納まりが良くないのでは?という、疑念が大きくなりました。
しかし、今の状況のまま散水試験を行っても、ひび割れからなのか、ガラスブロック廻りからなのかという、判別を付けることができないため、ひび割れ補修を行い、入水を防いだ後に、ガラスブロックのみに散水を行うことにしました。
16か所あるガラスブロックを一つ一つ散水試験を行っていきます。
これで漏水しなければガラスブロックからの入水の可能性が少なくなるのですが、1か所目でいきなり漏水再現となってしまい、その後、16か所すべてに散水し、合計3か所から漏水となりました。
そこで、お客様とご相談し、ガラスブロック廻り1か所のモルタルを斫り、下地をむき出しにして納まりを確認させていただくことにしました。
ガラスブロック廻りのモルタルを斫りを終わると、防水紙の上に、防水テープが4方全て見え、しかも角は張られていない施工となっていたため、浸入した水を中へ呼び込んでしまうという納まりとなっていました。
防水テープを撤去し、防水紙をめくると、ガラスブロックと木下地との取り合いには、何も処理がされておらず、そこから室内の光が差し込んでいる状態で、木下地も湿っており、雨漏りの大きな原因は、ガラスブロック廻りであるということが明らかになりました。
ガラスブロックというのは雨漏りの多い場所です。
今回、ガラスブロックでなければよいと思いながら、散水試験を行っておりましたが、やはりガラスブロックからの浸入ということになってしまいました。
ウッドバルコニーの端末なのですが、ビス穴から水が浸入し、腐食させてしまいました。
空を向いている面、いわゆる「脳天」から釘やビスを打ち込むと、腐食する可能性が高まります。
それは当然で、入り込んだ雨水がとどまるからです。
ビスは垂直部に対し、横向きに、できれば斜め上に打つべきなのです。
]]>この写真の破風板を見て、腐食していると思いますか?そう、腐食はしていません。塗装した塗膜が著しくはがれている“だけ”です。
では、なぜこれほど塗膜が剥がれていても腐食しないのか?それは、このむき出しになっている破風板表面に雨がかかったとしても、下に流れ落ちていくからです。雨が止めば、じきに乾き、腐朽菌は生きていけません。
でも大多数のリフォーム業者は、このように塗膜が剥がれている木部を指し、「劣化が進んでいるので早急に手を打たなければならない」と指摘するのではないでしょうか。
これは腐食していますが、
こちらは腐食していません。
同じように塗装されているようですが、なぜでしょう?
それは、木枠の下端が水切りに接しているか否かの違いです。上の写真では、水切りの上に木枠が乗っています。窓ガラスの表面に生じた結露による水分が水切りの上を流れ、木枠の下端とのわずかなすき間に入り込みます。狭いすき間には毛細管現象(細い空間を、重力や上下左右に関係なく液体が浸透していく現象)が起こりますので、水を引き込みます。またすき間が狭ければ乾きにくく、いつまでも水分が留まった状態になります。
そして木材が乾燥する前に再び結露したり雨が降ったりして木材表面を濡らします。そうして繰り返すうちにやがて腐朽菌が付着し、腐食が進行していくのです。
一方、下の写真は水切りの上に木枠を乗せることなく、双方の取り合い(接合部)を意図的に離しています。これにより、木材が小口から雨水を吸い込むことなく、腐食を防ぐことができたのです。
要するに木材が腐食する原因は、その木材が組み合っている形状(納まり)によるところが圧倒的であり、塗装することで腐食を防ぐ効果はほんのわずかでしかないのです。
]]>したがって、建築物においては、一方で外部から室内への雨水の移動を防ぎながら、他方で室内に発生する湿気を逃がさなければなりません。
そこで、雨仕舞(あまじまい)の考え方がたいへん重要になってまいります。
雨仕舞とは、狭義には、「雨水を建物外部に速やかに排出する仕組み」のことです。
私は個人的に、建築における「防水」の概念、具体的には雨水の浸入をシャットアウトする在り様と対比するものであると捉えています。
自然界における水の移動は原則として上から下への一方通行です。かたや、水蒸気は下から上へも移動します。その特性を応用したのが「雨仕舞」の考え方です。
雨仕舞を取り入れれば、一定のルールの下ですき間を設けることが可能になります。
そして、そのすき間から換気がなされ、外部からの水分の浸入を防ぐことと、内部に発生した水分を外部に排出することの双方が高度に両立されます。
この仕組みによって、建物内部における意図しない水分の滞留を防ぐことが可能になり、ひいては建物の維持延命をもたらします。
特に、高温多湿な日本の気候下においては、雨仕舞の仕組みなしには建物の維持を図ることはできないのです。
私たち雨漏り110番にお問い合わせをいただく案件の中には、塗り替え工事を行ってからそれほど期間が経っていないものが多くあります。塗り替え工事を行う前から雨漏りしていたケースのほかに、工事を行った後から雨漏りし始めたケースもあるのですが、そういったお問い合わせを受ける際に、個人的に疑問に感じることがあります。
そもそも、そのお客様はどうして塗り替え工事をされたのか、という動機についてです。
おそらく、お客様ご自身の資産の中で最も価値があるか、そうでなくともかなり上位に入るであろう「建物」を守り、資産価値を下げないために依頼されたものと思われます。そうであるならば、その結果雨漏りが解決していないこと、ないしは雨漏りが発生したこと、そして、その責任を塗り替え工事を行った業者に求めないことに、どうしても矛盾を感じてしまうのです。
例えば、木造住宅において、構造体である柱・梁などの腐食は、腐朽菌が発生することによって起こります。腐朽菌が生息するには水分が必要ですから、木材に常に水分が供給されていることが、腐食が起こる前提となります。逆にいえば、水が介在していなければ腐食は起こりません。すなわち、建物に水分が介入するメカニズムを断つことが、建物をもたせることの本質であり、それには、雨漏りを止めることが最低条件になってくるはずです。ならば、塗り替え工事後に雨漏りしているという状況においては、お客様が塗り替え工事に対し支払った対価を、実際には得ていないのではないかと思えるのです。
そこで、改修工事を行う業者が、そのことを理解しているか否かを見極める簡単なポイントがあります。
塗り替え工事の見積前調査に訪れた際、雨水が浸入することによるリスクをわかっている者なら、いま雨漏りしているか、過去に雨漏りが起きていたかを確認するはずです。なぜなら、外壁などを安易に塗装してしまうと、その上部から雨水が浸入していた場合、かえって水の逃げ場がなくなり、自ら塗った塗膜が膨れてしまったり、腐食を促進させてしまったりすることにつながりかねないからです。
つまりは、外装を改修する業務に携わる者にとって、雨漏りに関する知見は必須の項目であり、そのことを知らずして本質的な改修工事などできるはずがありません。要は、改修工事と雨漏り修理とは密接に関係し、切り離すことなどできないのです。
建物を「直す」工事においては、成果物が目に見えないものである場合が多いため、大半の工事では、注文者と請負者の間で、その工事の真の目的を共有化することなく進められます。そこで、注文者であるお客様が本質的な対価を得るためには、その工事を行う本当の目的を、自ら明らかにすることが必要であり、そして、すべてを請負者にゆだねるのではなく、その施工が目的を遂げるために有効であるかどうかを、十分に検討されることが重要なのではないでしょうか。
]]>たとえば、金属サイディングにてカバー工法にされたお宅の事例。
ここに水をかけると、
ここから出てきました。
…なんのことか分からないですね(笑)
建物の全景を撮った写真で説明します。
青矢印の地点に水をかけたところ、赤矢印から出てきたのです。言葉で書けば、南面バルコニーに水をかけたら、西面から水が出てきたということです。写真では分かりにくいのですが、バルコニーの端から南西角まで2メートルほどありますので、西面に水がかかってしまうことはありません。したがって、おそらく、南面にかけた水は、金属サイディング同士が生じるすき間やサイディングを取り付ける際の部材をつたって横に移動し、角を曲がって西面のはじまで達したのです。
カバー工法は、いわゆるボロ隠しのようなもので、もともとの外壁がどのような状態であっても、取り付けてしまえばきれいに直ったようなイメージになります。ただし、一旦雨漏りが発生すると、トラブルになっている部分が隠されてしまうため、その原因を究明することがたいへん難しくなってしまいます。
もちろん、カバー工法で取り付けられた外壁材を雨水が乗り越えたときに、その雨水を速やかに外に逃がす仕組みがきちんと備えられていれば問題ありません。ただし、それには、もともとの外壁を適切に補修した後に新しい外壁材を張ってゆくことになります。ですから、何もせずに張っていくのに比べ、仕上がった際の見た目が変わらないにもかかわらず、金額は大きく変わってきます。
カバー工法は、取り付けに伴うリスクがたいへん大きいのです。したがって、外壁材の耐久性などより、それを取り付ける際のリスクを避けることを重視しなければなりません。
カバー工法を検討される際には、安易に選択することは避け、多方面からじっくりと考えられることが大事です。
この画像は、外壁に水をかけているところですが、窓サッシの枠に水が入り込まないように、ナイロンシートやエアコンパテなどを駆使しています。
この調査では、画像の位置に1.5時間散水し、水が浸入していないことを確認しました。
その後、窓サッシの枠に対し、このように水をかけたところ、雨漏りが再現されました。
この水がかからないように覆い隠す措置は、丁寧に行えば1箇所あたり1時間近くかかってしまうこともあります。
しかしながら、調査対象以外に水がかからないようにしたからこそ、水の浸入位置が特定されたのであり、ないがしろにできない、きわめて重要な措置です。
現状雨漏りしている訳ですから、水をかけて雨漏りが再現されるのは、ある意味当然です。
それより、どこにかけたら雨漏りしなかったかを突き止めるのが重要であり、また技量のいるところなのです。